このWeblogではテレビとか有名人の批評はあまりしないんですが、いてもたってもいられないもんで……。
昨日放送の「サンデーモーニング」(TBS)で、ストライキなどのプロ野球の一連の騒動について質問されたスポーツジャーナリストの玉木正之氏が、2度目のストライキが回避された状況を「問題の1000分の1も解決していない」と評したことに対して、社団法人全国野球振興会の大沢啓二理事長が「問題の1000分の1しか解決っしてないってのはねえだろ!」と激怒したということです。
それに対し玉木氏は、自身のサイトで「齢だけ重ねて日頃アナクロな暴言ばかりを吐き続ける無論理の餓鬼のような人物から非難されてもどうってことない」と大沢氏をなじってます。
リンク切れや文章が削除されるといけないので、全文を引用しておきましょう。
9月26日(日)
京都のホテルで爆睡してたら友人からの電話。「『サンデーモーニング』で大沢親分がオマエのことメチャクチャ非難してるぞ。玉木、出てこい!とまで言うとるぞ。あれはヒドイぞ…」まあ、齢だけ重ねて日頃アナクロな暴言ばかりを吐き続ける無論理の餓鬼のような人物から非難されてもどうってことないけど、「野球を知らん奴が…」という言い方はあきませんな。そういう幼稚な経験論を振りまわすから、これまでプロ野球界を親会社のいいなりにさせてきたんやで。政治を知らん奴は政治を語るな…、経営を知らん奴は経営を語るな…。そうして唯々諾々と長いモノにまかれ続けてきた体育会系の人物に公の場で欠席裁判されるとは…。野球の歴史(もちろん中世以来のボールゲームの歴史と19世紀以来のアメリカの野球史のことですよ)も(おそらく一度も)勉強したことのない人物から経験論だけで暴言を吐かれてもなあ…と、うんざりしてたところにTBSの担当ディレクターから謝罪の電話。「深夜にお疲れのところをわざわざ時間をとってくださったのに、あんな発言が飛び出して申し訳ありません」というので「僕は自分で見なかったけど、そんなにひどいものだったなら、大沢さんに謝罪してほしいなあ。玉木、出てこい!と彼が言ったらしいので、僕は出ていきますから来週の番組でコーナーを設けてくださいよ。あんたをいじめる気はないけれど…」と答える。病院に寄ったあと新幹線で帰宅。明朝TBS『ウォッチ』出演のため都内のホテルへ。キャンセルしたろかなあ… と、ふと思うが、まあ、担当者も違うことやし、ここは大人の対応で(笑)。
たぶん大沢氏は「選手会やその関係者は閉塞した状況を打開しようと大変な思いをして働いて、或る程度事態は前進したというのに、そのことを評価しないで『1000分の1しか』はないだろう」ということが言いたかったんだと思います。
たしかに、1000分の1とまではいかずとも、まだまだ課題は山積しているのだとは思います。しかし、たとえ1000分の1でも問題が解決したのなら、その1をなぜ評価しないのでしょうか。「よくやった」とか「大変だったな」とか「まだまだこれからも残る課題の解決に向けて頑張らなきゃな」というような、エモーショナルな言葉はないのでしょうか。
玉木氏(本当は呼び捨てにしたいですが)は、こういう発言の意図もくみとることなく、20歳も年上の相手に向かって「餓鬼のような人物」などといった口汚い言葉を書き連ねています。まあ、人間としての器が小さいということですね。自分で自分を馬鹿だと喧伝しているようなものです。
別に大沢氏は全国野球振興会(プロ野球OBクラブ)の理事長だからといって、どこかの球団を経営しているとか選手と直接対峙する立場ではなく、その発言が球界の動向に大きく影響を及ぼす訳ではありません。こう言っちゃなんですが、たかがテレビ番組の1コーナーで吠えただけです。ナベツネ相手ならともかく、そこまで影響力のない人物に、たとえ自分のことを悪く言われたからといってこの言い様はないでしょう。
もう1つ、「野球の歴史を勉強している」ということと、今回の日本プロ野球の騒動について語ることとは全く関係ありません。この騒動は、どちらかといえは歴史学的視点からではなく経営学・経済学的視点でかたるのが適切ではないでしょうか。
玉木氏は京都市出身、東京大学中退ということです。京都は「反権力」「反中央集権」というイデオロギーが強く、共産党が強かったりするような土地柄です(私の知る限りでは)。おまけに一応日本でNo.1とされている大学に進学したということで、野球推薦で私立大学に入ったような体育会系の人物を低く見る気持ちが強いのでしょう。
私の手元に『暴れん坊列伝』(文春ビジュアル文庫)という本があります。プロ球界で暴れん坊と呼ばれてきた人物を数多く取り上げて語った本であり、複数のライターが文章を寄せています。その中で玉木氏は近藤貞雄氏についての文章を書いていますが、他のライターの文章と読み比べると何かが違うのです。実際には読んでいただくしかない(ただしこの本は出版社で品切れ)のですが、一言で言えば自分の主観を押しつけているというか。あるイデオロギーのようなものがあってそれに前面に出したような書き方をしているのです。どうも違和感(もちろん悪い意味で)を感じずにはいられませんでした。今回の事件で、玉木正之という人物の本質が見えたような気がします。
まあ、「唯々諾々と長いモノにまかれ続けてきた体育会系の人物」もどうかとは思いますが(ちなみに大沢氏は長い物に巻かれるタイプではないはずです。体育会系の社会に属しながら、筋の通らないことや間違ったことは目上の人間相手でもハッキリ主張し、ときにはそれが騒動を起こすことになるようなタイプです。これまで私が見聞きしてきた限りでは)、それよりもエモーショナル的なものを蔑み、物事を理性・知性だけで捉え片づけようとするタイプの方がどうかと思います。
ちなみに私は小学生の頃から後楽園球場で日本ハムファイターズの試合を見る機会がよくあったほか(ファンではなかったです)、元気のないときは大沢氏の本『球道無頼』を読んで気持ちを奮い立たせたり、毎年夏に東京ドームで開かれる「モルツドリームマッチ」で氏が監督を務めるモルツ球団の試合を見ているなどしています。そんな訳で大沢氏びいきな一面がありますが、それと今回のこととは関係ありません。たとえ玉木氏の発言に激怒したのが他の人であっても、私は同じように憤ったと思います。
とりあえず、こうした“自称スポーツジャーナリスト”のような頭でっかちにはなりたくないものです。