宮崎サンマリンスタジアムでのジャイアンツvs.ホークスの練習試合を、日テレが「プロ野球は生まれ変わる! ジャイアンツキャンプ密着SP」として放送していたので見てみた。この時期になると毎年日テレは日曜の昼にこのような番組を放送するのが慣わし。
ゲストとして萩本欽一氏が出ていたが、随分と勝手なことばかり喋っていて「なんでそーなるの?」と思った。
例えば、ジャイアンツ先発のルーキー・野間口投手のピッチングを厳しく評価する解説の江川卓氏に対して「あまりキツいこと言い過ぎなんじゃないの?」という趣旨の発言。それを受けて江川氏は「解説者という立場では厳しい視点で選手をチェックしてそれを話さなければならないので、この点をご理解いただきたい」「ジャイアンツの各選手に対しては『応援したい』という気持ちを当然持っている」と返していた。その口調はクールではあったが「わかってないなぁ、この人」という感情がこもっているようなものだった。当然のような気がする。
他にも、次のようなことがあった。
・これまでタイトル争いに絡んだことがない高橋由伸選手が「今年は何か1つでもタイトルを獲る」と決意を述べているのを紹介しながら“高橋由伸は生まれ変わる!”というVTRが流れたのだが、このときに「高橋君は変わらなくていい。今までどおりでいてほしい」と真逆のことを言ってみる
・野間口投手のピッチングを見てのメモとして、およそ野球の中身とは関係ないようなことばかり記されているものを見せる
果たして、この番組、つまり「今年の巨人は生まれ変わります!」ということを全国の視聴者にアピールするために放送されたものに、萩本氏が出る意味があったのだろうか?
萩本氏といえば昨年「ゴールデンゴールズ」というチームを旗揚げし、話題を振りまいている。
「農地コーチ」なるポストを設けたり、「先発投手を女性にして、打たれたら男性の投手に交代させる。女性を守るのは男の役目だから」などと言ってみたり、極楽とんぼの山本圭壱を入団させたり、何より自身はオーナーではなく監督を務めたり… と話のタネには事欠かない。最後の「萩本氏自身が監督に就任」については、シダックス野村克也監督が「オーナーの方がいいのではないか」と異を唱えているが。
このような一連の動きを見ていると、正直「どこまで本気でやろうとしてるのか?」と疑問に思わざるを得ない。ここでいう「本気」とは、勝てるチームを作り、萩本氏自身も言う「都市対抗への出場」を狙うということである。「話題を振りまき、野球界の復興を目指す」ということではない。甚だ勝手な憶測だが、萩本氏の頭の中では「勝てるチームを作る」と「話題を集める」の割合は3:7位じゃないかと思う。本気度はまあ野球のバッターは3割打てれば一応及第点とされているから、ちょうどいいだろうか。
たしかに、野球というスポーツはサッカーをはじめとする他の競技に人気を奪われている。だから「昔のように野球が人気のあった時代をもう一度取り戻したい」という動きがあってもおかしくはないし、人気取りも必要にはなってくる。しかし、人気取りばかりに目がいって肝心の「試合に勝つ」「強いチームを作る」という以降が疎かになっては元も子もない。
都市対抗に出場できるようなチームを本気で作りたいなら、先に挙げたような話題作りは「強いチーム作り」にとってマイナスにはなってもりプラスにはならないだろう。私としてはこれらを肯定する気にはなれない。「もう一つの甲子園」こと定時制・通信制高校の野球大会など、野球に長く関わった経験はあっても、肝心の技術とか戦術とかについて素人である萩本氏が監督として采配を振っても、「勝てるチーム」はできないと思う。
もっと言ってしまうと、(これはうがった見方だが)「話題作り」という中に「野球界にとっての話題作り」だけではなく「自分自身の話題作り」という不純な動機が隠されている気がする。欽ちゃんのお笑いというのは1970年代から1980年代初頭までは流行ったが、その後は衰退している。かつて週に3本は冠番組がある時期も存在した(月曜日にフジテレビの「欽ドン」、水曜日にテレビ朝日の「欽どこ」、金曜日にTBSの「欽曜日」)が、そんな隆盛も今は昔。最近はNHKのお年寄り向け番組やTBSのプロ野球珍プレー好プレーものの番組などでしか活躍の場はない。毒のない、ともすれば視聴者に媚びてるとも思えるような笑いが飽きられた結果だ。私個人としても、彼のお笑いはどちらかといえば「嫌い」に近い。そんな状況下で「もう一度脚光を浴びたい」「話題の渦中に入りたい」という動機づけが生まれ、「野球界への貢献」という形でそれを昇華しているとしても、決して不思議ではない。
とまあかなり否定的なことを書いてきたが、わずかながら望みを託したいと思っている。昔に比べたら人気も観客数も参加チーム数も激減した「都市対抗」という大会の名を挙げ、そこへの出場を目指すと言ってるのだから、この点を信じて「萩本氏は本気で野球界を盛り上げようとしているのだ」と期待し、一人の野球好きとしてしばらく動向を見続けていきたい。