このページについて

2005年03月19日 23:59に投稿されたエントリーのページです。

一つ前の投稿は「蓄膿症に苦しむ」です。

次の投稿は「初めてのコードレスマウス」です。

他にも多くのエントリーがあります。ホームページアーカイブページもご覧ください。

Powered by
Movable Type 3.34

アップルWebバッジ

« 蓄膿症に苦しむ | ホーム | 初めてのコードレスマウス »

どっちの仏語学校ショー ──日仏学院対アテネ・フランセ

三連休の初日。先週の土日は短時間ながら出勤して仕事したため、12日連続で会社に行くことになり、正直言って体はクタクタ。それでもどうしても出かけない理由があり、出かける。

出かけた理由とは、模索し続けている4月以降の仏語学習のあり方を考えるため、アテネ・フランセの視聴覚教育クレディフの説明会への出席だ。毎週土曜の15時から開かれるので、重い体を引きずって会場へ向かう。

説明にあたった職員の方は一応事務職だが、単なる事務員ではなくご自分もクレディフで学習し続けた結果本科を卒業されたという経験をお持ちの方。マシンガンのような語り口から「日本人にとっての仏語学習」「正しい学習法」「仏語圏で仏語を身につけることの弊害」などのテーマ、そして肝心のクレディフという学習課程(方法)についてのお話がある。

私は、これまでアテネでの学習経験は2年ほどあるが、クレディフでの学習経験はない。ただ、今回仏語学習のやり方を変えることを思いついてから、独特のカリキュラムと方法論を持つこの課程に注目していた。とはいえ通常は週3日(月・水・金)2時間授業を受けなければならず、残業続きの私にはちょっとキツイ(会社とアテネとは歩いて10分くらいの距離にあるとはいえ)ので、土曜日に受講できないか確認するために出席した次第。

話の中身には、共鳴するところ大だった。先日の記事でも触れた「仏語を学習するのに日本語を介していてはダメ。仏和辞典をすぐ引くのは間違い」「知っている単語、自分の表現できる範囲で何かを話したり書いたりするべき」という持論が間違っていなかったことを改めて認識した。職員の方曰く、「仏語は仏語で考えた方が楽」だという。私は日頃2種類の仏仏辞典を使っているが、これはそうした方が楽だからなのではなく、「こうすべきだ」と半ば義務として自分に課しているに過ぎない。たしかに、慣れてしまえば仏和辞典より仏仏辞典を使う方がずっと楽になってくるのかもしれない。そう感じることのできない私はまだまだレベルが低いということですな。

もう1つアテネにはサンテティックというカリキュラムがある。こちらは週3回6時間どっぷり仏語に浸るコースで、受講者は肉体的にも精神的にもとにかく地獄の苦しみを味わう(ただし得られる成果は大きいという)。働きながら通うのはまずムリだ(勿論私も)。クレディフ説明会参加者の中にはこちらとクレディフのどちらを選ぼうか迷っている人がいて、相談を持ちかけたところ「他のことと両立したいならクレディフの方がいい。とにかく仏語学習だけに専念してもいいならサンテティックで」という答えが返ってきていた。そういう人は音楽とかバレエとか何かやっていることがあって、その道を究めるためにパリ等へ留学したい、そのために仏語を学習する必要があるようだ(私からすればものすごく羨ましい……)。

クレディフにしろサンテティックにしろ、かなり言語学や学習心理学などをよく考えて作られているのが、仏語学習に興味のない読者の方々にもなんとなく想像していただけると筆者としてはありがたいのだが、実はこういうコースは東京日仏学院には存在しない。

よく、仏語を学習したい人がアテネと日仏のどちらを選択するかで迷うケースがあるようだ。私自身は日仏で基礎をひととおり習い、その後アテネで発音矯正と中級課程の授業を受けた。その経験や両校で設置されているコースの違いを考えても、どちらが良いという唯一の結論は出せない。両校にはそれぞれ長所と短所があるし、成り立ちも全く違う。さて、どうしたらいいか…?

私の好きなプロ野球による譬えで、野球に興味のない人には申し訳ないが、1980年代半ばから1990年代後半のヤクルトスワローズに譬えるならば日仏学院は関根潤三監督、アテネ・フランセは野村克也監督だ。

関根監督は、べらんめぇ調の前監督のもと萎縮した(チームの成績も低迷)選手達をまずのびのびプレーさせることに力を注いだ。「あいつらは去勢しちゃダメ」と、無死満塁でクリーンアップ全員が空振り三振しても彼らをどやすことはしなかった。そのおかげで徐々に選手達は力をつけ始め、チームもテールエンドからは脱出するに至った。

そこで、次は野村監督の登場である。実力がついてきたところで、「野球は頭で考えてするもの」とID野球をチームに注入し、野球の理論、セオリーを叩き込んでいった。その結果、就任3年目でリーグ優勝、その翌年には日本一に輝くまでに至った。

仏語学習の話に戻ると、まず「フランス語を勉強してみたいんだけど、続けられるかしら」「とりあえずフランスの雰囲気を味わいながら楽しく勉強してみたいワ」という人には、日本におけるフランス政府の文化センターである日仏でまずはのびのび仏語学習を開始する。ある程度実力がついてきたところで、今度は「発音をしっかり身につけたいワ」「或る程度学習経験を積んできたけどちょっと頭打ちだワ」と思った人には、クレディフやサンテティック、それに発音課程の充実した(日本人が日本人向けの学習方法で教えてくれる)アテネに移って学習を続ける。そのあとは必要に応じてアテネに居続けるもよし、日仏に戻るもよし、中小の仏語学校に通うもよし、仏語圏に留学するもよし、その人の自由である。

日仏は文化センターであり、日本においてフランス文化を国中に発信するための基点である。フランスの雰囲気を味わいながら学習するにはいい。アテネは語学学校であり、しっかりした学習理論に基づいたカリキュラムが多くある。マジメな雰囲気である。

仏語学習のスタートの場としてアテネを選んでも別に間違いではない。ただ、アテネはあくまで語学学校であり、教師以外は仏語圏の人の出入りもない。そのためフランスの雰囲気を肌で感じながら学習するというのは難しい。真面目に「仏語を勉強するんだ!」という気持ちがしっかりある人ならいいが、途中で挫折してしまいそうな、仏語学習にちょっと不安のある人にはアテネより日仏を最初に選んだ方がいいだろう。

───────────────────────────────────

蛇足。これはクレディフの説明会であった話の一つなのだが、仏語の発音で日本人が最も苦手とする母音があるという。それは… [ou]という発音なのだそうである。

日本語に比べて仏語は唇の緊張度がかなり強い。日本語は唇の周囲の筋肉に対して力を加えないでも発音できてしまい、また何か話しても相手に通じてしまうが、仏語は筋肉をやたら動かす。大きく口を開けてみたり、口をすぼめて大きく前に突き出してみたりといった案配だ。

ABBAのヒット曲に"Voulez-vous"という曲があるそうだが、例えばこのタイトルも[ou]の発音が2つもある。「ヴーレーヴー」なんて発音しちゃダメだ。ちゃんと唇を前に突き出して発音しなければならない。