別になりたいわけでもないのに、ここ数ヵ月ほど某巨大掲示板群でバスの運転士に関する情報を集めている。
もとは鉄道愛好家(“マニア”や“鉄ちゃん”といわれるほどのめり込んではいない)だったのが、より身近な存在であるバスに趣味としての対象を移し(それでものめり込んではいないけど)た結果である。まあ鉄道にせよバスにせよ、趣味の対象とするなら車両とか路線とかダイヤとかに着目するのが普通だ。
勿論そちらにも興味は持っている(というかそちらの方が主だ)が、派生的に運転士や営業所の事務員(運行を管理する係)の労働の実態にまで興味を持つようになっている。
その掲示板のスレッドを見ていると、「拘束時間がやたら長い」とか、「給料がメチャクチャ安い」とか、いろいろな話を聞く。
一応「嘘は嘘であると見抜ける人で無いと掲示板の利用は難しい」とは言うが、こと現役のバス運転士からのものと思われる一連の書き込みについては、おそらく本当のことなのではないかと思う。
そんな書き込みの内容を裏付けるようなサイトを、とあるスレッドで見つけた。
関東バス労働組合
ひととおり全ページを見てみたが、一言で言えば大変好感の持てるサイトだった。
「労働組合」「闘争」と聞くとどうしてもイデオロギー的なもの、例えば「労働者と雇用主との対決」「左翼」「共産主義」などのキーワードが浮かんできてしまうが、このサイトの作成者である労働組合員は、雇用主である会社に対して法外な要求をしているのではない、ほんの少しでも労働者の生活が楽になる、お客さんにより安全を提供できるようになるのであればそれでいい、それだけでいいから何とか状況を改善してほしい… そんな姿勢が窺える。
例えば、「バス車両の紹介」というページ。
決して、バスマニアに向けた各車両形式の詳細な紹介のページではない。「駆動方式がオートマではなくマニュアルなので云々」「後部ドアの位置が他の車両と違うので、下車の際にはご注意を」「車幅が狭いので座席の向きを変えてある」… バスマニアにもある程度満足はいくだろうが、それ以上に乗客に向けたメッセージ性の強い紹介文となっている。
実はこの会社、一部の営業所に所属する運転士は“荒くれ者”と言われている。運転ぶり・接客応対・身なりなどが荒っぽいと専らの評判だ。私もたまにこの会社の路線に乗ることがあるが、「言われてみればそうかなぁ」と思えなくもない。ところが、少なくともこのサイトを見ている限り、そんなことは全く想像できない。
各バス会社のサイトは、時刻表や路線図などを情報提供するのが主で、それが一応“乗客に対するサービス”として考えられている。たしかにそれもそうなのだが、ただ時刻表や路線図を載せればいいというものでもない。見づらいものであればダメだし、検索性に優れていなくても困る。普段私がよく乗車する会社の携帯電話用サイトなんて酷いものだ。どこをクリックしてもトップページしかされず、「時刻表検索」「運行状況表示」なんて機能が全くはたらかない。それを思えば、この労働組合(=従業員)が発信するサイトは、会社非公認のものとはいえユーザー(=乗客)にとってはよっぽど役に立つサイトだ。何より、普段利用してもらっている乗客への思い、温かみが感じられる。
折しも今日3月25日はストライキの決行日だったが、回避されたという。運転士だけでなく営業所の事務員や工場勤務者も含めるとすべての従業員がこのサイトから窺えるような「お客様思いの静かな闘士」ではなく、少々ガラの悪い“荒くれ者”も中にはいるだろうが、それでも私からは低賃金・劣悪な労働条件で働く社員の方々に幸あらんことを祈りたい。