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2005年03月30日 23:00に投稿されたエントリーのページです。

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「談話室滝沢」に行く

3月6日の記事で取り上げた「談話室 滝沢」に行ってきた。

会社帰りの夜8時30分。いつもどおり新宿駅のホームに降り立った私は、家路へと向かう路線に乗り換えず、一路東口へ。目指すは「新宿中央口店」。私が「談話室滝沢」という店の存在を知ったのは、この店の前を通りがかったのがキッカケ。

階段を下りていざ地下へ。既に何かが違う。階段を下りきってドアの手前にはししおどしが。ガラスのドアが開き、中へ入ると喫茶店のようなレストランのような… 何だかよくわからない。カウンターは旅館の受付のような感じ。うーん、やっぱりこれも何だか違う。
「お一人ですか?」カウンターにいた女性店員に声をかけられて頷くと、中年の男性ウェイターが席を案内。禁煙席を希望したところ、池(!)を渡ったところにある4人席に通された。
「いらっしゃいませ」ちょっと小腹がすいていたので、飲み物にデザートでも一緒に食そうと思っていたところ「申し訳ございません。デザート類はすべて品切れになってしまいまして…」えーっ! せっかく(普段食べない)ショートケーキでも食べようと思っていたのに… お菓子ならあるというので、羊羹など数ある中から月餅をチョイス。飲み物はアイス抹茶ミルクを選ぶ。ただの抹茶じゃなんだかつまらないからね。
 辺りを見渡す。
 まず、ウェイトレスの着ている服がなんとなく喫茶店らしくない。いわゆる普通の形をしたツーピースないしワンピースだ(ただし無地)。「いかにも喫茶店の制服」という感じがしない。
 そのウェイトレスだが、あちらこちらで席に座っているお客の話し相手になっている。「なぜ閉店することになったのか」「いつ閉店の話を聞いたのか」などを訊かれているらしい。他にも、店の思い出話をしているお客(年配の人)もいるようだ。誰も皆、嫌な顔一つせずお客の話に耳を傾けている。
 しばらくしてアイス抹茶ミルクと月餅が運ばれてくる。これで1,100円也。飲み物だけで1,000円取られるならこの方がいいだろう。抹茶アイスを口に含める。ま、何のことはない普通の抹茶ミルクだが(勿論美味しいことは美味しいけど)、器をご丁寧に両手で持って口まで運んでいる自分がいる。茶の席でお茶をご馳走になっているみたいだが、普段足を踏み入れることのなかったいわば高尚な場所に来ているのだからこれくらいは許してほしい。月餅ともどもお上品にいただく。
 お冷や(水)を半分ほど飲み干していたのだが、「お取り替えいたします」とわざわざコップ一杯に入ったものと交換してくれた。普通の飲食店なら水を注ぎ足すところだが、さすがに高級店は違う。

 辺りを見回してみよう。
 かなり広い店内だが、ほぼ満席。“談話”するところだから当然と言っちゃ当然なのだが、私のように一人で大人しくしている人よりは会話している人が多い。そのため少々騒がしく感じられる(といってもさすがに呵々大笑する人とか奇声をあげる人はいない)。閉店が明らかになる前の普段だったらこれがもう少し落ち着いた雰囲気になるのかもしれないが…。そういう意味ではもっと早く一度足を踏み入れておけばよかったと思う。
 客層は、やっぱり年齢が高め。おじさん達のグループのほか、中年女性のグループも見られる。もしかしたら談話室滝沢のOGだろうか。昔話に花を咲かせているのかもしれない。
 私もそうだが、カメラで店内を撮影している人が多い。店内は携帯電話使用禁止だが、電波なんて飛んでこない(圏外)から通話はできない。ってことで内蔵のカメラで撮影することになる。中にはケータイではなくデジカメで撮影している人もいた。
 壁を見ると、「四十年間のご愛顧ありがとうございました」という掲示とともに「三月三十日と三十一日の売上金全額を日本赤十字社に寄付いたします」という掲示が。実はカウンターには日本赤十字社の募金箱が置いてあり、普段から募金活動を行っていたようだが、売上金全額を寄付するとはすごい。この行動にはどこか「閉店間際の美学」を感じた。

 ゆっくり味わいながらアイス抹茶ミルクと月餅をいただき終わる。そもそもなんだか落ち着かない(私が普段足を踏み入れるような場所じゃない)気分でいたのが、注文の品をいただき終えてしまうといよいよ拍車がかかる。水を飲みながらしばらくはたたずんでいたが、夜10時近いということで席をあとにすることにした。

 あらためて、店内にある池の前にしゃがみ込む。ちゃんと本物の鯉が2匹ほど泳いでいて、水面に顔を出して餌を欲しがっているのだか空気を吸っているのだかしている。池を横切る形で石が置かれていて、先ほど私はその石の上を渡って席に着いたのだが、店の端の方にちょこっとあるのではない、或る程度広さのある池が喫茶店の中にあるなんて私は初めて見たような気がする。

 お会計。1,100円を支払うと、「謝恩券」をくれた。全店共通、200円分のもので「有効期限平成17年3月31日 有効期限を過ぎますと使用出来ません」とある。そりゃそうだ、3月31日を過ぎたら全店なくなってしまうのだから。

 最初で最後だったが、「談話室滝沢」は私にとってまたとない良い思い出を作ってくれた。「飲み物だけで1,000円」ということもあり、今まで店の前を通りがかっても一度も入ることがなかったが、何かの機会に入れることがあればよかっただろうと、後になって思う。
 私だけでない、数多くの人達の心の中で、「談話室滝沢」は永遠に生き続けるだろう。