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2006年08月22日 23:59に投稿されたエントリーのページです。

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「1年で2〜3年分の時間を過ごせる」

都内で人材ビジネス企業の取材。
一言で言ってしまえば、ベンチャー企業。

取材相手は20代後半の役職者。なかなかのイケメンである。

取材の最初から思わず腰が引けてしまったのだが、その取材相手の動きがとにかく早いのだ。じっくり立ち止まって考えるとか、言葉を選ぶとかいうことがあまりない。
例えば、「おたくのサイトのページ見本あります?」と営業職やディレクターに尋ねたそばから、「あっ、自分でネットにアクセスしてサイトを見たほうが早いや」とサッと席を立ってノートパソコンを持ってくる。
それと、取材と並行してカメラマンが進めている撮影の被写体(=会社の社員)を手配しに席を立ったかと思えば、また戻ってきて、再び席を立つと今度は今回の取材とは全く関係ない要件(打ち合わせ?)まで済ませてくる。
だから、取材中何度も中座することがあった。別に中座すること自体はどうでもいいんだけど、そんなことより一度にいくつものことを並行して進めてしまうスゴさに呆気にとられた。

よく、ベンチャー企業の求人広告を見たり、取材に行ったりすると、「この会社での1年はよその会社の2〜3年に相当する」というフレーズを見聞きする。それだけ密度の濃い時間が過ごせるというわけだが、その実際はどういうものなのか、どうやったら1年で2〜3年の時間を過ごせるのかについては今までは目にしたことがなかった。
今回、それがようやくわかった気がする。

その取材相手、年収が1000万近いという。なんでも新卒入社後すぐにプロジェクトのリーダに抜擢され、ビジネスを成功させてきたらしい。そんな人物で、おまけにあれだけ多くの仕事をいっぺんにこなせれば、そりゃあ収入もスゴくなるってワケだ。
話しぶりに、どこか自信がみなぎっていた。

その自信で、自社の求人に応募してくる求職者もバッサリ斬っていた。「こういうところがダメだ、ああいうところが足りない」というその話の内容には、思わず「うんうん、なるほど」と頷きたくなるようなところが数多くあった。

某巨大掲示板群の転職板を覗いていると、彼にバッサリ斬られてしまうであろう人間がたくさんいる。私はどちらかといえば彼よりも某巨大掲示板群の人間に近いから、彼の話に頷く一方で、「最近のベンチャー企業が考えてることなんてこんなものか」と思ってしまった。

彼のようなベンチャー企業の人間と、某巨大掲示板群の転職板の人間との意識の乖離は、かなり大きなものがあると思う。
具体的には、「一つの会社に正社員として腰を落ち着けて、定年まで不安なく働きたい」という後者と、「会社は自信のステップアップのための土台に過ぎない。稼ぐだけ稼いで、あとは起業するなり早期にリタイアするなりすればいい」という前者の違いだ。
実際、某巨大掲示板群では、「平均年齢20代」というと「それだけ長く働けない企業」とみなされ、ブラック企業扱いされてしまう。会社の歴史が長いにもかかわらず平均年齢がそのようだと、なおさらのことだ。間違いなく彼らからはこういう会社は敬遠される。
でも、ベンチャー企業の人間は、そんなことへとも思わない。「平均年齢20代、若くていいじゃん。勢いがあっていいじゃん。」おそらく、そんなふうにしか捉えないだろう。

私に言わせてもらえば、彼のような人間は、たしかにビジネスパーソンとしては私より遙か上を行っているし、年収だって私が一生貰えないであろう金額を貰っている。ただ、人生の陰の部分を知らないんじゃないだろうか。例えば老親が病気がちだとか、家族が介護を必要としているとか、そういうことを多分体験していないんじゃないかと思う。
私も彼くらいの年齢の頃(およそ10年前)は、イケイケドンドンなところがあったし、正社員として働いていたこともあり今より年収は上だった。でも、30代に突入してすぐに両親や自分自身にいろいろなことがあって、紆余曲折を経て、今は在宅でフリーランスの身分で働いている。いろいろな体験から、人生の光の部分も陰の部分も多少はわかっているのではないかと思う。

帰り道、取材に同行したディレクター(おそらく年齢は彼と同じくらいかそれより下)に「彼のようになってみたいか」と訊いてみると、「いや、私はああまでして給料一杯もらいたいとは思いませんから。あくまでまったりと働きたい」という答えが返ってきた。